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今こそやるべき少子化対策 連載4 ~少子化の真犯人は「結婚できない社会」にある~

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コラム 2026.3.23

こんにちは。黒永会計事務所の黒永です。前回のコラムでは、少子化の真の原因は「子供を産まなくなった」ことではなく、「結婚する人の割合が激減した」ことにあるとお伝えしました。

では、なぜ結婚する人はここまで減ってしまったのでしょうか。
今回はその背景にある「経済的な現実」に踏み込んでいきます。

「結婚したくない」のではなく「できない」

内閣府の調査によると、独身の若い世代の大多数は「いずれ結婚したい」と回答しています。つまり、結婚への意欲そのものが失われたわけではありません。

問題は「したい」と「できる」の間にある、大きな壁です。

結婚を踏みとどまっている最大の理由として、若い世代が一貫して挙げるのが「経済的な不安」です。家賃、生活費、将来の教育費——これらを安定して賄える見通しが持てなければ、結婚という大きな決断には踏み切れません。この「経済的な見通しが立てられるかどうか」は、雇用形態と収入に直結しています。

つまり、結婚できない本当の理由は「意欲の欠如」ではなく、「経済的基盤の不安定さ」にあるのです。

雇用形態が、結婚率を左右している

ここに、見過ごすことのできないデータがあります。非正規雇用者の有配偶率は、正規雇用者と比較して著しく低いという事実です。特に男性においてその差は顕著で、「収入が安定しているかどうか」が、結婚という選択に直接影響していることがわかります。

バブル崩壊以降、日本では雇用の非正規化が急速に進みました。1990年代初頭には全労働者の約20%だった非正規雇用の割合は、現在では約40%にまで拡大しています。雇用が不安定なまま、社会全体が「結婚できない構造」に向かって静かに変化してきたのです。

非正規雇用の拡大は、単なる労働問題ではなく、少子化を加速させてきた「構造的な原因」のひとつである。

経営者として、考えるべきこと

ここで、私が経営者の皆様にお伝えしたいことがあります。

非正規雇用の活用は、企業にとって短期的にはコスト削減につながります。しかし中長期で見ると、それは「結婚できない層を増やし、少子化を加速させ、最終的には自社の市場・労働力を縮小させる」という構造に、図らずも加担していることになります。

アベノミクス以降、大企業の内部留保は約540兆円にまで膨れ上がりました。しかし、その間、実質賃金はほぼ横ばいのままです。利益が企業内部に蓄積される一方で、労働者への分配=労働分配率は低下し続けています。これは単なる倫理の問題ではなく、経済の自己破壊とも言えます。

「雇用の安定」と「賃金の引き上げ」は、経営者が少子化対策に貢献できる、最も直接的なアクションと言えます。

少子化対策の出発点は「結婚できる経済力」

結婚して子供を産み育てたいという意欲は、今の若い世代にも確かに存在しています。その意欲が現実の行動につながらないのは、経済的な基盤が整っていないからです。

少子化対策として語られる「子育て支援」や「保育所の拡充」も大切な施策ですが、その前段階として、結婚に踏み切れるだけの経済力をつけること——すなわち、非正規の正社員化・実質賃金の引き上げ・税制面での子育て世帯への優遇——が不可欠です。

政府の政策を待つだけでなく、経営者一人ひとりが雇用と賃金のあり方を見直すことが、日本社会全体の未来を変える力につながると私は考えています。

少子化対策の第一歩は「支援制度」より先に、「結婚できる経済基盤をつくること」にあると考えます。