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自社株式の相続対策

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自社株をスムーズに継承させよう

会社経営者の相続対策といえば、すなわち事業継承対策となります。その事楽継承対策の重要な要素として、株の評価がでてきます。いわゆる「自社株の評価」です。自社株のうち上場企業でないものは、非上場株式(取引相場のない株式)と呼ばれています。

非上場株式の評価は非常に複雑ですが、事業継承対策の重要な部分ですので、これからわかりやすく説明していきましょう。

 

自社株式の評価方法

評価の区分

非上場株式の評価は、

 ・類似業種比準価額
 ・純資産価額
 ・配当還元価額

の3つのデータを使って行います。

具体的には、まず非上場会社の株式を相続や贈与によってもらった人が、その会社の同族株主(支配株主)になるか、少数株主(零細株主)になるかを判定します。

次に、同族株主の場合には、その会社を五種類の規模に分けます。これによって、どの評価方法をとるかが決まります。株主を区分したうえに、さらに会社の規模も分けるというのは、いかにもやっかいなことです。しかし、非上場株という”値”のないものに価額をつけるには、いろいろな要素や条件を加味しなければならないのです。

 

会社規模の分け方

同族株主(支配株主)が、その株価を計算する場合、まずその会社を

 ・大会社
 ・中会社(中会社の大、中会社の中、中会社の小)
 ・小会社

と、5種類の規模に分けます。
会社の規模によって、それぞれ違った評価方法をとろうということです。

5種類の規模は、

 ・従業員数
 ・純資産価額(帳簿価額)
 ・取引金額(売上高)

によって判定します。

 

評価方式

類似業種比準価験方式

この方式は、評価会社の業性に類似した上場会社の平均株価を基とし、これに株価の形成要素である「配当」「利益」「純資産価額」の三つの要素を加味した比準割合をかけて評価するものです。

純資産価額方式

この方式は、評価会社が課税時期に所有している資産を、相続の評価基準によって評価替えをし、その合計額から負債の合計額を差し引いた金額、つまり相続税評価ベースによる純資産を求め、これを株価算定の基礎にしようというものです。
したがって、会社が土地等でのいわゆる含み資産を所有していると、含み益が大きければ大きいほど株価も高くなるしくみです。

配当還元価額方式(オーナー一族以外

最後に少数株主(零細株主)に適用される、配当還元価額方式をみてみましょう。これが最も簡単な方法です。
次の算式で株価を求めます。「年平均配当率」は前2年間の平均配当率です。なお、配当率が5%未満であったり、無配のときは5%の配当があったものとして、計算することになっています。

 

自社株式の評価引き下げのポイント

会社の規模を大きくする

非上場株の評価方法は、先に述べたように、会社の規模によって大きく変わります。
オーナー等の支配株主では、次の3種類の評価方法が適用されます。

  1. 類似業種比準価額
  2. 純資産価額
  3. 1,2の併用方式

一般的には類似業種比準価額の方が純資産価額より、低いとされています。したがって、類似業種比準価額の比重の大きい会社、いわゆる「大会社」に近いほど、株価は低くなります。また、会社の規模は、取引金額(売上高)、の純資産額、 従美の基準により、大会社,中会社、小会社の判定を行うこととなります。したがって、取引金額(売上高)を増加させる等の対策により、会社規模を大きくすることにより、株価を低くすることができます。

また、類似業種比準価額が純資産価額を上回った場合であっても、その場合は低い方の純資産価額で評価されますので、会社の規模を大きくして不利になるということはありません。

類似業種比準価額を下げる

「類似業種比準価額の判定は、「配当」、「利益」、「簿価純資産」の三要素で行います。そこで、類似業種比準価額を下げるためには、その三要素のいずれかを下げる必要があります。

1.「配当」を下げる

「配当」は、直前二年間の平均をとりますので、2年間無配にすることにより、「配当」の要素は「ゼロになります。

2.「利益」を下げる

「利益」は会社の決算における課税利益をベースに計算しますので、いわゆる、法人の節税対策が大いに効果を上げる要素となります。たとえば、役員退最金の活用が考えられます。

また、短期的、戦略的対策として、次のような方法が考えられます。

  1. 役員退職金を支払う
  2. 業績の悪い関係会社、子会社を合併する
  3. 好収益部門を切りして、後継者の会社に営業譲渡する

ここでは、aの役員退職金について具体的に検討していきましょう。

役員退職金には、2種類の形態があります。

■役員を退任しない方法
役員を実際に退任しなくても、次のいずれかの事実があり、役員としての地位や職務の内容が変わるなど、実際に退職したのと同様の事情があると認められるときは退職給与と認められることになります。

  1. 常勤役員が非常動になったこと(代表権のある場合を除きます)
  2. 収締役が監査役になったこと
  3. 報酬が分承変更浦の2分の1未満になったこと

また、非常動や監査役になったとしても、その退職した役員が実質的に経営上主要な地位を占めていたり重要な意思決定をしていると認められる場合は、退職とは認められません。

■役員を退任する方法
もう1つは、実際に取締役や監査役を辞任する方法です。これには、任期満了で退任するか、任期の途中で退職する場合とがあります。

以上1つの方法のうち、有利なのはの役員を退任しない方法だと思われます。この方法だと、たとえば社長が非常動の取締役になった時点で、それまでの勤続年数、功績倍率等を反映した、相当額の役員退職金が受け取れ、次に、死亡時には死亡退職金を受け取ることができ、退職手当金の非課税枠(法定相続人1人500万円)を利用することができます。

3.「簿価純資産」を下げる

最後に「簿価純資産」についてみてみましょう。薄価純資産は、資本金と会社が留保した利益の合計額をいいます。したがって、類似業種比準価額の3つの要素のうち、対策が最も困難な要素です。ただし、2(利益を下げる)の利益対策をすることで、結果的に留保利益が減少しますので、前記の役員退職金の支給は「簿価純資産」を引き下げるうえにも有効な対策といえます。

 

純資産価額を下げる

純資産価額方式による株価評価をするうえで、ここでいう、純資産価額とは、前記の「簿価純資産」と違い、相続税評価上での評価額をいいます。すなわち、資産に含み益がある場合には株価が上昇します。この方式の株価対策としては資産の減少か負債の増加のいずれかということになります。有効な方法としては、取得価額より相続税評価額の方が低い資産を借入金によって購入することが考えられます。

たとえば、借入金で土地および建物を購入する方法です。土地は路線価で評価し、建物は固定資産税評価額で評価しますので、取得価額の30%~20%は低い評価額となります。その借入金との差第額は純資産の圧縮になります。仮に、10億円の借入で、土地建物を購入した場合には3億円から4億円の評価減が期待できます。

ただし、購入時から3年以内に相続等があった場合には、その資産は取得価額で評価されるので、 早めの対策が必要となります。

 

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