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家族信託による注意点

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  4. 家族信託による注意点

「家族信託」を利用する上では、デメリットというほどのことは
ないと考えております。

しかし、利用に際して注意しなければならないことはいくつかございますのでお伝えして
いきたいと思います。

注意点1:税務上の節税メリットはない

信託をすることで、相続税額が下がるなどの節税となることはありません。
また個人確定申告をする際に不動産所得がある場合、青色申告決算書(白色の場合には収支内訳書)
は、信託されていない不動産所得と信託の対象となっている不動産所得と区別して記載することを
要します。なお、信託不動産の年間収支上の赤字が生じた場合、無かったものとみなされます。
そのため、以前より確定申告をされている方は 注意が必要です。

注意点2:受託者の選定を慎重に

財産は受託者名義になりますので、受託者として適切に財産を管理・処分できてなおかつ信頼できる方がいるかどうかがポイントです。
信託契約に基づかず、勝手に財産を処分することもあります。
対策としては受託者の暴走を監視する監督人等を設定することです。

注意点3:税務申告の手間

資産の一部又は全部を信託財産に入れた場合、そこから年間3万円以上の収入がある場合は、信託計算書・信託計算書合計表を税務署に提出しなければなりません(法律上は、前年分を毎年1/31までに提出すべしとなっています)。
また、毎年の確定申告の際、信託財産から不動産所得がある方は、不動産所得用の明細書の他に信託財産に関する明細書を別に作成して添付しなければなりません。
これらの手間は増えますが、毎年の確定申告を税理士さんにお願いしている方にとっては、負担は何も変わらないと考えて良いと思います。

注意点4:実務に精通した専門家が少ない

家族信託は、新しい制度です。弁護士・司法書士・税理士等の法律専門職なら、あるいは公証役場
の公証人なら、誰にでも相談できるという訳ではありません。

中途半端な知識や経験の専門家に相談すれば、トラブルに生じるリスクが高いです。
最先端の財産管理・資産承継の仕組みである家族信託についてきちんとした見識と実務経験がある
士業の方にご相談することが必要です。

誰にも相談せずに、書籍やSNS、ネットの情報だけで家族信託を実行しようとするのは、かなりの
リスクを背負うので、絶対に専門家にご相談ください。

注意点5:家族信託はあくまでも「手段」

『家族信託を使って節税をする』という観点でセミナーを開催したり、書籍を出したりする専門家
も増えています。しかし本来は、節税対策という短絡的な話ではありませんので、節税対策を含め
た家族信託を検討する方は、そのための計画を持っていなければ、家族信託を組むだけでは何ら節
税効果は見込めません。
家族信託を組むだけでは直接的な税務メリットが生じないこと、を理解しておきましょう。

家族信託は、認知症による資産凍結対策、資産凍結回避の先にある相続税対策や空き家対策、ある
いは事業承継対策、共有不動産の塩漬け回避策、親なき後問題への備え・・・など様々なニーズに
応えうる「手段」であるという正しい理解のもと、本人及び家族の想いを皆で共有した上で、その
目的を実現する選択肢の一つとして家族信託を検討する必要があります。

注意点6:専門家への報酬を必要経費と割り切る

前述のとおり、家族信託は最先端の仕組みであり、通常の遺言書作成や成年後見などの業務に関す
る報酬よりも高めです。しかし、専門家に相談せずに家族信託を実行することは、あまりにリスク
が高すぎてお勧めできません。

これは一般的な相続での様々な分野でも同じことが言えますが、専門家に依頼をした場合は
もちろん費用がかかりますので費用対効果を考えれば安いと言えるでしょう。

注意点7:長期に亘り当事者を拘束

あまり考えずに信託プランを考えてしまうと、何世代にわたって信託の受託者に財産の処分を制限
してしまうこともあります。
それが原因でかえって争いが起きてしまったら元も子もありません。長期の信託プランを立てると
きは配慮を持って慎重に決めるように注意しましょう。

20年、30年先を見据えた家族信託の設計には、通常以上の熟慮と親族関係者への想いの伝達・共
有・納得が必要だと考えます。

◎以上の注意点を踏まえて、充分な話し合い・相談などされると活用しやすい制度となります。

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