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生前贈与その他の相続税対策

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小規模宅地等の特例を有効活用して相続税対策を行おう

生きている間に財産を贈与する生前贈与。贈与税はかかるの?生前贈与をしたら相続はどうなるの?など、生前贈与などに関した相続税対策を解説していきます。

相続税対策にお悩みなら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

生前贈与対策の基本とは?

相続税の増税で、相続税対策の必要性が高まっていますが、その対策の中でも一番注目すべきなのは「生前贈与」です。なぜなら相続税増税の反面、生前贈与については今回新設の教育資金の贈与の非課税制度や、平成24年からの住宅取得資金に係る贈与税の非課税制度等でわかるように、国は生前贈与には減税措置を行っています。

従来の暦年贈与や配偶者の贈与税の税額控除、精算課税制度等の制度も併せて活用することは、相続税対策と、シニア世代の資金を流通させることにより市場の活性化を図り、景気対策にも効果がありますので、是非積極的に行うべきでしょう。

贈与税の節税分岐点

贈与税の税率は、相続税と同様に最高55%に引き上げられ、また20歳以上の者が親や祖父母といった直系尊属から贈与を受けた場合とそれ以外との2通りに分かれました。

また、贈与税の税率は高いというイメージがありますが、ポイントは「相続税の実効税率より低い贈与税の実効税率であれば、必ず節税効果がある」ということです。

設例

設例でみていきましょう。

相続税の税率が40%とすれば、40%以下の贈与税の税率の範囲内の贈与はすべきなのです。ちなみに、直系尊属が500万円を贈与した場合、贈与税の実質負担率は9.7%です。次に、1,000万円を贈与した場合の実質負担率は17.7%となり、1,500万円を贈与した場合の実質負担率は24.4%となります。

結論として、いずれも40%以下なので、そのまま相続するよりも贈与した方が有利になります。

 

贈与税の配偶者控除を利用しよう

財産は、夫婦の協力のもとに作られますが、ほとんどの場合、名義はご主人のものになっています。
そこでご主人に相続が起きた場合に、多額の相続税がかかったのでは、国民感情として、不公平感が生じます。

その対策として、相続税では、配偶者の法定相続分までは相続税をかけないという「配偶者の税額軽減」という制度を設けています。

そこで、贈与税においても、結婚して20年以上経過した夫婦間においては、居住用財産(または居住用財産を取得するための金銭)をもらった場合は、2千万円までは贈与税が無秘になる制度があります。この場合、財産そのものを贈与する必要はなく、夫名義の自宅を2千万円分共有持分にすることも含まれます。

この制度を、「贈与税の配偶者控除」といいます。

現実的には、基礎控除の110万円をあわせた2,110万円までは、贈与税がかかりません。

相続の前3年以内の贈与財産は、贈与がなかったものとされて相続財産に加えられますが、配偶者控除を受けた居住用財産は相続財産とならない特典があります。

したがって、相続直前であっても、速やかに、居住用財産を配偶者に贈与すべきです。その分だけ、相続税の軽減が図れます。

要件

贈与税の配偶者控除を受けるには、次の五つの要件を満たす必要があります。

  1. 婚姻期間が10年以上である配偶者への贈与であること
  2. 贈与財産は、居住用財産か居住用財産を取得するための金銭であること
  3. 居住用財産の贈与の場合は、翌年3月15日までに居住し、その後も引き続き居住する見込みであること。金銭の贈与の場合には、翌年の3月15日までに居住用不動産を取得してそこに居住し、その後も引き続き居住する見込みであること
  4. 今までにその配偶者からの贈与について配偶者控除の適用を受けていないこと
  5. 贈与税の申告をすること

2,110万円以内の贈与であれば贈与税はかかりませんが、この場合でも翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与税申告書に必要な書類を添付して提出する必要があります。

配偶者控除を受ける上手な贈与方法

どの資産を贈与するか

贈与する財産は土地のみ、建物のみ、土地・建物両方、の三通りが考えられますが、将来の値上がり等を考慮した場合には、土地のみの贈与をお勧めします。

持分の贈与も可能

その土地が高額な場合は、そのうち2,110万円分の持分を贈与する方法をとるとよいでしょう。その部分だけ分筆して贈与する必要はありません。

居住用財産の3千万円控除を2倍活用する方法

居住用財産を近い将来売却予定する場合には、土地・建物を両方贈与することが有利になります。 居住用財産を売却した場合には、3千万円の特別控除を受けることができますが、これは土地と建物両方を所有していることが要件となります。

そこで、配偶者が居住用財産の贈与を受ける場合には、土地と建物の両方贈与を受ける必要があります。そうすると、その居住用財産を譲渡した場合には、夫婦それぞれ3千万円ずつ最大6千万円の特別控除を受けることができ、その譲渡にかかる所得税の非常に有効な節税手段になります。

 

暦年贈与を利用しよう

暦年贈与のポイント

与は確にでも

生前贈与は、対象が相続人に限らず躍でも可能です。お孫さんやお母さんでも可能なので、世代飛 ばしや資産分散の効果があります。

なるべく多くの人に年を分けて

贈与税は、毎年贈与を受ける人ごとに基礎控除(120万円)が適用され、税率も累進課税で、金額が少なければ低く抑えることができます。そこで、贈与はなるべく多くの人に、また年を分けて行うほうが有利といえます。たとえば一二月に贈与するのであれば、12月と1月に贈与すると、課税される財産が半分になりますので、税額は半分以下に軽減されます。

贈与契約書を作成しよう。

生前贈与は、贈与する方と受ける方との双方の同意が必要となります。このことを「諾成契約」といいます。

そこで、次のような「贈与契約書」を作成するべきです。税務調査の時に、贈与を証明する時に有効だといえます。

財産管理は受け取った人がする

親が子供に照うするうえで子供の預金通帳を親が管理している場合は、贈与が成立していないとみなされるので、即与を受けた側が管理するべきです。

贈与税の申告をする

基礎控除を超える場合はもちろん、基礎控除以下でも申告することにより贈与の証明の一つになります。

 

住宅資金贈与の非課税制度

住宅を購入・建築するということは、人生の一大事業です。そこで一番問題なのは、住宅資金です。

その住宅資金の一部について、親または祖父母から子または孫が贈与を受けても、一定額に対しては贈与税が非課税になるという「住宅取得資金の贈与の特例」制度があります。

この制度は国の住宅政策の一環ですので、積極的に利用すべきです。

では、その内容のポイントをみていきましょう。

贈与者

父母、祖父母などの直系尊属で年齢要件はありません

受贈者

贈与を受けた年の1月1日に20歳以上である子供や孫で、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること

対象家屋

家屋の登記簿上の床面積5O㎡以上24O㎡以下(マンションは区分所有専有面積)贈与を受けた年の翌年3月15日までに一定の居住用家屋を取得、新築または増改築をして居住すること

非課税限度額

対象年と住宅の種類により、下表のとおりです。
相続時の精算課税2,500万円との併用もできます。また住宅取得資金の贈与は、相続開始前3年以内の贈与加算の対象にはなりません。

 

ワンルームマンションを生前贈与

ワンルームマンションを贈与する

中古ワンルームマンションを購入した場合をみてきましたが、生前贈与を活用しても、とても有効な手段となります。

ワンルームマンションを購入した場合は、親が所有する現預金がマンションに替わり、評価額が大幅に削減されるスキーム(仕組み)でした。

生前贈与の場合は、親の現預金で1,000万円の中古ワンルームマンション3戸を3,000万円で購入し、3人の子供に贈与したケースでは、中古ワンルームマンションの相続税評価額は3O%程度ですので、300万円程で贈与税の評価をされます。また、基礎控除の110万円も控除されますので、1戸300万円と評価しても、1人あたりの贈与税額は19万円となり、3人で合計57万円の贈与税を払えば、完全に親の3,000万円の財産が、子供に移転するのです。

2年に分ける方法

生前贈与を有効に活用するポイントは、なるべく多くの人に、なるべく年を分けてやればやるほど、有利になります。先ほどのケースも、3人の子供に1年で贈与するよりも、今年の12月と来年の1月に分けて贈与するのです。

税額でみていくと、1年で贈与すると、贈与税が3人合計で57万円、2年に分けると24万円となり、差引33万円有利になります。

 

教育資金贈与制度が新設された

生前贈与の促進策として、今回の改正で注目されているのが「教育資金贈与制度」の新設です。

この制度は、祖父母の(親も含む。以下同じ)から孫 (子も含む。以下同じ)に教育資金を贈与した場合には孫1人当たり1,500万円まで贈与稅が非課税となるものです。孫が3人いれば4,500万円まで無税で贈与できてその分相続財産を圧縮することになるので、節税効果が期待できます。

今までも、孫の教育資金を祖父母がその都度贈与した場合にはかからなかったのですが、今回は将来の教育費についても一括して非課税にするということで、シニア世代の豊富な金融資産を市場に流通させ、景気浮揚を図ろうとする政策的な理由もあるのです。ただし、運用手順が簡単ではありません。

まず、教育資金の1,500万円を信託銀行(一定の金融機関含む)の教育資金口座に預け、孫が入学金や学費を支払う度に学校から領収書を銀行に提出して、やっと払い出しができるという制度です。これを孫が30歳になるまでやるのです。気が遠くなりそうな話です。

この制度は、3年間の時限立法にもかかわらず、孫が30歳の時に使いきれなかった残金に対し、贈与税が課されます。三歳の孫であれば27年後ですが、覚えているでしょうか。

このように制度として実状にそぐわないところがありますが、相続財産を一度に縮小させる効果と、教育資金については学校関係のみでなく学習塾、水泳教室、テニススクール、英会話スクール等の学校以外にも1,500万円のうち500万円を充てられることになっていますので、教育関係業界の景気刺激策になればよいと思います。

 

自社株贈与の非課税制度(事業継承制度)

事業承継税制

中小企業の経営者にとって一番の関心事は「事業継承対策」です。すなわち、後継者を育てその事第一楽をスムースに後を継いで欲しいというものです。そこで問題になるのが「自社株」の問題です。

業績がよく社歴が長い会社は、自社株の株価がどうしても高くなります。その株を相続対策として贈与しても、相続財産として相続しても、贈与税、相続税が多額に課税されることになるのです。

そこで平成21年に経済産業省の主導で行った政策の一環で、一定要件をクリアすれば贈与税も相続税もかからない制度「事業承継税制」をスタートさせたのです。

今回、平成27年の税制改正で一部要件が緩和され、適用され易くなりました。具体的には、中小企業の経営者がその会社の後継者に最大三分の二までの株式を贈与し経営を引き継いだ場合は、5年間にわたって雇用の八割を維持するなど一定の要件を満たせば、贈与税が全額納税を猶予されるという制度なのです。

ただし、予額が大きいので、事業を廃止したり雇用の8割を維持できなくなった場合には、全額納税しなければなりません。

相続税についても同様の要件で、8割の納税を猶予する制度があります。

この事業承継制度は、事業を要件を守ってきちんと継続している限りは、ずっと猶予されます。しかし、途中で事業をやめたり、次の要件を5年間継続できなかった場合などに、猶予がなくなり、納秘義務が生じます。

 

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